下水道コラムvol.3~下水管の調査~

下水管のお話

皆さんの家から排水された下水が下水処理場に流れていくのはご存じかと思います。
このコラムでは、家や工場から下水処理場に繋がっている下水管について掘り下げていきたいと思います。

早速ですが、日本全国に埋設されている下水管(※)の長さを全て合わせるとどれだけの距離があるかご存じでしょうか?
※流域下水道管、地域関連公共下水道管等の全てを含む長さ

日本の端から端まで3,000kmなので、それよりも長い・・・?短い・・・?

答えはおよそ50万kmあります。

日本の一般国道が66,000kmあるらしいですが、その7.5倍の長さがあります。
地球の外周換算をすると12周ちょっとある計算です。

下水処理場に下水を流すために、地下には蜘蛛の巣のように下水管が埋設されているわけです。

そんな下水管ですが、古い物では既に50歳を超えているものも・・・。

下水管の調査

道路やビルを直しているところは良く見かけると思いますが、
下水管もコンクリート製のものが多いので、当然メンテナンスが必要になります。

下水管が古くなると、穴が開いたり地震によってひび割れが発生しやすくなります。
すると下水が地下に漏れ出して、臭気や地盤内空洞の原因になってしまいます。

では、地下に埋設されている下水管はどうやって点検をするのでしょうか?

下水管は太いものは直径6mを越え、細いものではわずか10cmしかありません。

太ければ点検員が中に入れますが、細いところに入ることはできません。
そこで活躍するのが、この管内調査用カメラ車です。

大口径管渠用のカメラ車

細いすき間に入っていったり、遠隔操作で自走することができるため
管内の劣化度合いを調査するために使われています。

下水管の補修

下水管の補修風景

では、劣化が確認された下水管はどうやって補修すればよいのでしょう。

地面に埋まっているので、掘り返して下水管を交換する・・・?

残念ながらそれは出来ません。
下水管を外してしまうと、そこから下水が漏れ出てしまうことになります。
一度供用を開始してしまったが最後、下水道は流れを止めることができないのです。

※規模の小さい箇所であれば、上流側を止水して、ポンプ等で下流に移送することで乾燥状態での施工が可能。

「下水管を交換するので、
 1日洗濯やお風呂、トイレに家事を我慢してください。」
というのは、とても現実的な話ではありませんよね。

補修しなくてはいけない下水管の場所が下水処理場に近づくほど
影響範囲が「住宅街、地区、町・・・」と、どんどん広くなっていきます。

つまり、下水を流しながら管を補修するしかないのです。
そのための方法がたくさん開発されているためいくつか紹介します。

反転工法

熱や光で硬化する樹脂を含侵させた材料(FRP等)をマンホールから管内に挿入し
管内で反転加工して、樹脂を硬化させることで既設管の内側に新たに管を構築する工法。
素材を硬化させるため、施工場所よりも上流で汚水をせき止める必要がある。
また、管径の制約もある。

形成工法

熱や光で硬化する樹脂を含侵させた材料(FRP等)をマンホールから管内に挿入し
水圧や空気、蒸気圧で拡張・圧着させて硬化することで既設管の内側に新たに管を構築する工法。
素材を硬化させるため、施工場所よりも上流で汚水をせき止める必要がある。
また、管径の制約もある。

さや管工法

既設管よりも小さな管を挿入して、既設管の内側に新たに管を構築する方法。
下水を流したまま施工ができるものもある。

製管工法

既設構造物(管)の形に合わせて、管を構築する工法。
下水を流したままでも施工可能なメリットがある。
(板状のFRPをらせん状に広げたりと様々な工法が開発されている。)


劣化具合や太さによって適切な工法を選んで補修して
下水管の健全度を保つことで、快適に下水道を利用できるようにしています。