下水道コラムvol.2~処理場の電気設備~
巨大な電動機
下水処理場には電動機(モーター)が欠かせません。
殆どの機械には電動機が付いています。
中でも汚水ポンプ設備やブロワ設備には巨大な電動機が使用されており
下水処理場で消費される電力の半分以上がこの設備で使われています。
写真に写っている汚水ポンプで、最も大きいものでは毎分123トンの汚水を汲み上げることが出来ます。
いまいちピンと来ない数字ですが、お風呂(200L)換算すると1分間で615杯分になると言えばその凄さが伝わるでしょうか。
これだけ大きなポンプでも1台では、処理場に流れてくる下水を汲み上げるのに能力が足りません。
適正に処理するためには複数台運転する必要があります。
一方ブロワ設備は、最も大きいブロワで毎分300立方メートルの空気を送ることができます。
一般的な風船は10L(0.01立法メートル)の空気で膨らむらしいので、毎分3万個(※)の風船を膨らませることができる計算になります。
ちなみに、家庭用ヘアドライヤーは毎分1立方メートルちょっとです。
※風船を膨らませるための圧力等、他の要因も必要になるため、実際にはその限りではありません。
ただし、パワーがある分消費する電力も中々のもので、ポンプ1台で
ヘアドライヤー500台を同時に回しているのと同じくらいの電気を消費します。
ブロワも1台でヘアドライヤー400台分の電気を消費しています。
処理場の電気設備
下水処理場で使用されている電気は用途に合わせて
様々な電源(交流AC/直流DC)や電圧を使用しています。
例えば、機械設備を自動で動かすためのシーケンサやセンサー類はDC100VやDC24V、AC100Vで動いています。
上記で紹介した巨大な電動機はAC6600Vで動いていたり、それよりも小さな電動機はAC400V、AC200V、AC100Vと幅広い電圧が使われています。
もちろん、処理場の中にも照明やパソコンもあるためAC100Vは場内のいたるところで使われています。
また、交流の引込みも単相三線式、三相三線式・・・と
種類がありますが、踏み込み過ぎると難しい話になるので今回は割愛します。
皆さんの家はAC100Vが一般的で、エアコンやIH用にAC200Vを使っている方もいると思います。
仮に処理場で使う電気の種類を全て網羅できるように電力会社と契約すると電気料金が膨大になってしまうため
処理場では1種類の電気を契約して、場内に引込み自身の設備内で変圧をして電気を使っています。
四之宮水再生センターを例に取ると
66,000Vで受電をして、特高変電所と呼ばれる所で6,600Vに降圧して
各電気室に送電しています。
さらに、各電気室でAC400,200,100VやDC電源に変圧して各機器に送電しています。
小分けに電気室を分ける理由はいくつかありますが
大きく分けて
・故障時のリスク分散のため
・電気設備の点検時に影響範囲を最小限にするため
・大容量の電気設備は機器、管理費が掛かるため
以上の理由で小分けにしています。
故障や点検によって下水処理場の運用に支障が出ないように様々な対策が施されています。