下水道コラムvol.6~下水管と汚水管と雨水管~
今回のコラムは若干専門的な話になりますが、下水道についてより深く知って頂くためには切っても切れない用語、「下水」「汚水」「雨水」について解説していきたいと思います。
その一環で、下水処理場の集水方法である「分流式」と「合流式」についても解説しますのでぜひ、ご一読ください!
下水管ってなに?
まず、日本の法律である下水道法の中で「下水」について次のように定義されています。
【下水】
-下水道法
生活若しくは事業(耕作の事業を除く。)に起因し、若しくは付随する廃水(以下「汚水」という。)又は雨水をいう。
つまり、「下水」と言った場合には汚水(生活排水等)と雨水の両方を指すことになります。
いったん脱線しますが、マンホールに「おすい(汚水)」と「うすい(雨水)」という表記を見たことがあるでしょうか?
写真のマンホールは漢字で表記されていますが、地域やマンホールの種類によってはひらがなで刻印されていたり。
雨水マンホールは雨水の排水が目的のため、表面にたくさん穴が空いていますが、汚水マンホールは臭気を出さないように密閉されているという特徴があります。
似たデザインをしていますが、よく見ると文言が違ったりするので近所のマンホールをぜひ観察してみてください。
さて、汚水用と雨水用のマンホールについてのお話をしたところで最初のお題に戻ります。
「下水管とは何のことをいうのか?」
上記写真のような、汚水マンホールの下には「汚水専用の管」が、雨水マンホールの下には「雨水専用の管」がそれぞれ通っているわけですが、先述のとおり「下水=汚水、雨水」ということなので汚水専用の管と雨水専用の管を総称して【下水管】と呼ぶわけです。
汚水管と雨水管について
工場排水や生活排水のことを【汚水】といい、汚水を流す専用の下水管を【汚水管】といいます。
おなじく、雨水専用の下水管を【雨水管】といいます。
地中に埋まってしまうと、どちらの管か分からなくなってしまうため
汚水用か、雨水用かを識別するためにマンホールに表記しているということですね。
ちなみに、汚水管や雨水管以外にも様々なマンホールがあり、それぞれが”何のマンホールなのか”分かるように大抵の場合は表記されています。
分流式と合流式について
では、なぜ汚水と雨水を分けるのかというと、下水処理場には処理能力が定められており、一度に下水をきれいにできる量が決まっています。
工場や家から排水された汚水はきれいに浄化して自然に返す必要がありますが、雨水はどうでしょうか?
自然に降った雨は汚水のように汚れているわけでは無いため、下水処理場で処理をする必要はありません。
しかし、汚水に加えて雨水まで下水処理場で受け入れてしまうと、処理能力を超えて本来きれいにしなければならない汚水が浄化できなくなってしまいます。
そのため、汚水と雨水を分けて集水し、汚水は汚水管で下水処理場へ送り、雨水は雨水管で川や海に排水しています。
汚水と雨水を分けて処理する方法を【分流式】といいます。
一方、汚水と雨水を一本の下水管でまとめて集水し、下水処理場で処理する方法を【合流式】といいます。
分流式と合流式にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、財政状況や地域の特性に合わせて最適な方式を取っています。
分流式
メリット
- 雨天時に大量の雨水が下水処理場へ流入してこないため、処理水質の確保がしやすい。
- 雨水の流入が少ない分、下水処理場の設備を小さくすることができる。
など
デメリット
- 雨水管と汚水管を別途埋設する必要があり、建設費が掛かる。
- 下水管の総数が増えるため、維持管理が難しくなる。また、電話線や水道管、ガス管といった他の埋設物との干渉を懸念する必要がある。
など
合流式
メリット
- 下水管の埋設数が減るため、維持管理がしやすくなる。
- 構造が単純なため、分流式に比べて施工が容易になる。
など
デメリット
- 雨天時に下水処理場への流入用が増加し、放流水質が悪化する原因となる。
- 雨天時に流入量が増加するため、下水処理場の揚水能力を超過してマンホールから溢水する原因となる。
など