下水道コラムvol.9~活性汚泥法のお話~

下水をきれいにする方法として、神奈川県下水道公社の処理場では「標準活性汚泥法」を採用しています。これは反応タンク内の微生物の働きにより生化学的に下水中の汚れを浄化する方法です。

多くの処理場ではこの方法を採用しており、中規模以上の下水処理場では運用・維持のコスト面から最適とされています。そのほかにも最初沈殿池をもたない「オキシデーションディッチ法」「長時間エアレーション法」や生物膜を使用した「接触酸化法」などがありますが、ここでは「標準活性汚泥法」について詳しく見ていきましょう。

なお、下水処理の方法については「下水の仕組み」のページでも簡易的に紹介しています。

下水処理のしくみ

沈砂池

沈砂池の粗目スクリーン(約100mm)
処理場に入ってきた下水

下水管から処理場内に入ってきた下水は沈砂池設備によって大きなゴミを取り除きます。

柳島、四之宮、扇町水再生センターでは粗目スクリーンと細目スクリーンと呼ばれる2段階のスクリーンによってゴミを取り除いています。(酒匂水再生センターは細目スクリーンのみ)

スクリーンとはザルのように等間隔で隙間の空いた構造になっており、粗目は100mm程度、細目は20~50mm程度です。

最初沈殿池

最終沈殿池の様子
最終沈殿池を通過した下水

大きなゴミを取り除いた下水は汚れを多く含んでおり、まだまだ見た目も濁った状態です。汚れには非溶解性・水溶性があり、「最初沈殿池」では非溶解性の小さな汚れを沈ませることで取り除きます。

およそ1~3時間ほど水をゆっくりと流下させることで、非溶解性の汚れは沈降します。これを生汚泥と呼び、生汚泥は濃縮・脱水・焼却工程を経て処理させます。

反応タンク

反応タンク中の微生物(ツリガネムシ)
反応タンク中の水(下水+活性汚泥の混合液)

小さな汚れを取り除いた水はほんの少しきれいになったものの、まだまだ透明度も低い状態です。

最初沈殿池を通過した下水は次に「反応タンク」へと到着します。反応タンクでは有機分を栄養源とする微生物(細菌及び原生生物を含む)を主体とする「活性汚泥」と下水を混合させ、空気を送り込みます。

 微生物は下水中の豊富な栄養源と空気により活発に活動し、汚れが減っていきます。これが活性汚泥法の原理という訳です。

この工程は10時間程度ほどの時間を要します。そのため、反応タンクは最初沈殿池より大型の槽となっています。

最終沈殿池

最終沈殿池の水(上澄み液+活性汚泥の分離液)
放流水(最終沈殿池の固液分離後、消毒したもの)

反応タンク通過後、下水と活性汚泥が混和させた状態の水を沈殿させ、固液分離します。

次の工程の最終沈殿池では最初沈殿池と同様に自然流下によって下水と活性汚泥を分離させます。およそ2~5時間かけて分離された活性汚泥と上澄み液のうち、上澄み液を次亜塩素酸ナトリウムによって消毒し、川や海に放流します。

一方、沈殿した活性汚泥は一部を反応タンクに戻し、一部は生汚泥同様、濃縮・脱水・焼却工程を経て処理させます。

以上が活性汚泥法を用いた下水処理の流れです。

このほかにも処理場には分水槽や雨水沈殿池といった設備があり、濃縮・脱水・焼却工程も様々な設備によって行われます。また、下水処理の維持管理には多くのノウハウがあり、すべてをここに書き記すと膨大な分量になりますので、それはまた別の機会に。

皆さんが下水を知るヒントになれば幸いです。